Anaplastic Lymphoma Kinase (ALK) とc-ros oncogene 1 (ROS1) は、関連性のある受容体型チロシンキナーゼ (RTK) です。ALKとROSは様々ながんで、変異型C末端融合タンパク質として発現することが報告されています (1-10)。表1は、同定されたいくつかのALKとROS1の融合パートナーと、それに関連するがんの種類の一覧です。
RTK | 阻害剤 | 融合パートナー | 関連するがん |
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ALK | Crizotinib5 | EML42,11, TFG1, KIF5B6, NPM7 | NSCLC1,2, ALCL7, CRC11 |
ROS1 | Crizotinib5 | FIG8, CD749, SLC34A29,11 | 神経膠芽細胞腫8、胆管がん10、卵巣がん3、NSCLC1,4、CRC11 |
表1 ALKとROS1融合パートナーと関連するがんのまとめ略語: ALCL=Anaplastic large cell lymphoma (未分化大細胞リンパ腫) CRC=Coloretal cancer (大腸がん) EML4=Echinoderm microtubule-associated protein-like 4 NPM=Nucleophosmin NSCLC=Non-small cell lung cancer (非小細胞肺がん) TFG=TRK-fused gene
CSTは、ALKとROS1の全長、C末端融合タンパク質の検出用に、感度の高い2つの抗体を推奨しています。
パラフィン包埋ヒト肺がん組織を、ROS1 (D4D6) Rabbit mAb #3287を用いてIHCで解析しました。注意:染色はFIG-ROS1融合型 (4)。
ROS1 (D4D6) Rabbit mAb #3287 (上) またはβ-Actin (D6A8) Rabbit mAb #8457 (下) を用いた、HCC78 (SLC34A2-ROS1)、U-118 MG (FIG-ROS1)、HeLa (ROS1ネガティブ) 細胞抽出物のウェスタンブロット解析。注意:HCC78細胞は、SLC34A2-ROS1融合タンパク質の、85、70、59 kDa型を発現します (1)。
ALK (D5F3) XP® Rabbit mAb #3633を用いた、パラフィン包埋ヒト肺がんの免疫組織学的解析。
ALK (D5F3) XP® Rabbit mAb#3633を用いた、NCI-H2228およびNCI-H3122細胞抽出物のウェスタンブロット解析。異なるEML4のエキソン (v1またはv3) が融合した変異体がみられます。
CSTは、PTMScan®技術を用いて、肺がんのチロシンキナーゼ活性について、大規模で偏りのない調査を行いました。CSTで開発されたこの独自の技術(11)は、細胞抽出液を消化したペプチドサンプルからCST™のモチーフ抗体を用いてイムノアフィニティー精製するもので、LCタンデム質量分析と組み合わせて解析することで、リン酸化、アセチル化、ユビキチン化などの翻訳後修飾 (PTM) の変化を同定、定量することができます。この研究では、リン酸化チロシンモチーフ抗体を使用して、NSCLCの細胞株と組織におけるプロテオームの変化を解析しました。
CSTは、PTMScan®技術を用いることで、41のNSCLC細胞株と150以上のNSCLC腫瘍における、受容体型チロシンキナーゼ (RTK) および非受容体型チロシンキナーゼのチロシン残基のリン酸化状態を調査しました。その結果、NSCLCの増殖や進行に関与するチロシンキナーゼを50種類以上、さらに、その下流基質を2,500以上同定しました。この研究の特筆すべき成果として、NSCLC細胞株や腫瘍の一部で、新たなanaplastic lymphoma kinase (ALK) とc-ros oncogene 1 (ROS1) のC末端融合タンパク質が同定されたことが挙げられます。
全長およびC末端融合型のALK、ROS1を検出するため、特異的なラビットモノクローナル抗体 [#ALK (D5F3) XP® Rabbit mAb#3633、ROS1 (D4D6) Rabbit mAb #3287] が開発されました。これらの抗体はIHCのアプリケーションで検証済みで、NSCLC検体で発現する、ALKとROS1の融合タンパク質を検出することができます (12、4)。
ROS1 (D4D6) Rabbit mAb #3287を用いた、パラフィン包埋ヒト肺がんのIHC解析。注意:染色されているのはFIG融合型ROS1タンパク質 (4)。
NSCLC患者サンプルのALK融合タンパク質を検出する、ALK (D5F3) XP® Rabbit mAbを用いた自動診断IHCスクリーニングアッセイを開発するため、ALK阻害剤Crizotinibの製造者であるPfizer, Inc.、診断テストのトップメーカーであるVentana Medical Systems, Inc.とパートナーシップ契約を結びました。
ALK陽性と診断された患者は、Crizotinibによる治療効果が見込めると考えることができ、この方法は2011年8月に米国内で認可されています。
ALK (D5F3) XP® Rabbit mAb #3633を用いた、パラフィン包埋ヒト肺がんのIHC解析。ALKを高レベルに発現する症例 (上) と、低レベルな症例 (下)。
CSTの科学者は太字表記されています。