Hippoシグナル伝達は進化的に保存された経路で、細胞増殖やアポトーシス、幹細胞の自己複製を制御することで、器官のサイズを調節します。また、Hippo経路の制御不全はがん発生の要因となります。Hippo経路の核となるのはキナーゼカスケードです。このカスケードでは、Mst1/2 (Drosophila Hippoのオルソログ) キナーゼ群とSAV1が複合体を形成し、LATS1/2をリン酸化して活性化します。次いでLATS1/2キナーゼは、転写共役因子であり、Hippo経路下流の主要なエフェクターであるYAPとTAZの2つをリン酸化して、それらの活性を阻害します。YAP/TAZが脱リン酸化されると、核内に移行してTEAD1-4および他の転写因子と相互作用し、細胞増殖を促進する遺伝子やアポトーシスを阻害する遺伝子の発現を誘導します。Hippo経路は、コンタクトインヒビションに関与し、この経路の活性は次に述べる様々な段階で制御されています。Mst1/2とLATS1/2は、Merlin、KIBRA、RASSF、Ajubaといった経路上流の分子によって制御されています。14-3-3、α-catenin、AMOT、ZO-2は、その結合によって細胞質内、接着結合部位、密着結合部位にYAP/TAZを保持しています。Mst1/2とYAP/TAZのリン酸化および活性はホスファターゼによって調節されます。Lats1/2とYAP/TAZの安定性は、タンパク質のユビキチン化によって制御されています。LATS1/2の活性は細胞骨格系によっても制御されています。Hippo経路についての研究は、過去十年間にわたって広く行われていますが、Hippo経路を制御している細胞外シグナルおよび膜受容体の性質については、明確な研究成果が得られていません。
この図の作成にご貢献下さった、カリフォルニア大学 (カリフォルニア州、サンディエゴ) のKun-Liang Guan教授に感謝いたします。
作成日:2010年11月
改訂日:2016年9月