Transforming growth factor-β (TGF-β) スーパーファミリーのシグナル伝達は細胞の増殖、分化、および幅広い生物システムの発生を制御する上で重要な役割を担っています。一般的に、リガンドに誘導されたセリン/スレオニン受容体キナーゼのオリゴマー形成と、TGF-β/activin経路については細胞質のシグナル伝達分子であるSmad2とSmad3のリン酸化によって、さらにBone morphogenetic protein (BMP) 経路についてはSmad1/5/9のリン酸化によって、シグナル伝達は開始されます。Smadのカルボキシル末端は、活性化受容体によってリン酸化されると、その共通のシグナル伝達トランスデューサーであるSmad4と共役して核内に移行します。活性化Smadは、転写因子と協働することによって様々な生物学的効果を制御し、細胞の状態に特異的な転写制御を行います。Smad6やSmad7などの阻害性Smadは、R-Smadの活性を弱めます。阻害性Smad (I-Smads) 6、7は、ネガティブフィードバックの一環として、アクチビン/TGF-βおよび BMPの両シグナル伝達によって、発現が誘導されます。TGF-βファミリー受容体やSmadの安定性は、Smurf E3ユビキチンリガーゼとUSP4/11/15脱ユビキチン化酵素によって制御されます。TGF-β/activin経路およびBMP経路は、MAPKシグナル伝達によって様々な段階で制御されます。さらに、ある一定の状況下においては、TGF-βシグナル伝達は、Erk、SAPK/JNK、p38 MAPK経路などのSmadに非依存的な経路にも影響を及ぼすことがあります。Rho GTPase (RhoA) は、mDiaやROCKなどといった下流にある標的タンパク質を活性化して、細胞骨格の構成要素の再構築を促進することで、細胞伸展や、細胞成長の制御、および細胞質分裂に関与します。TGF-βの活性化に続き、Cdc42/Racは、下流のエフェクターキナーゼであるPAK、PKC、c-Ablを介して細胞接着を制御します。
この図の作成にご貢献下さった、ライデン大学医療センター (オランダ、ライデン) のPeter ten Dijke教授に感謝いたします。
作成日:2003年1月
改訂日:2014年6月