ヒストンのメチル化 (Histone Methylation)

Histone Methylation

経路の説明:

4つのヒストン蛋白 H2A、H2B、H3、H4 により構成されるヌクレオソームはクロマチンの基本構成単位である。元々、DNA をパッケージングする静的な足場として機能すると考えられてきたが、より最近になって、ヒストンは、多様な翻訳後修飾を受ける動的な蛋白であることが示されている。アミノ酸残基:アルギニンやリジンのメチル化という2つの修飾は、ゲノムの活性化および不活性化領域の形成する主たる決定要素となっている。ヒストン H3(Arg2、17、26)と H4(Arg3)のアルギニンメチル化は転写の活性化を促すが、それは、補助活性化因子である PRMT1 や CARM1(PRMT4)を含む蛋白アルギニンメチルトランスフェラーゼ(PRMTs)ファミリーによりなされる。逆に、より多種のヒストンリジンメチルトランスフェラーゼが同定されており、そのほとんどが、当初、ショウジョウバエ Su[var]3-9 遺伝子、enhancer of zeste 遺伝子、トライソラックス蛋白において同定された、保存された触媒 SET ドメインを有する。リジンメチル化は、転写の活性化(H3 Lys4、36、79)と不活性化(H3 Lys9、27、H4 Lys20)の両者に関与している。

アセチル化とは異なり、メチル化はアルギニンとリジンの電荷を変えることはなく、クロマチンフォールディングに必要なヌクレオソーム相互作用を直接的に調節しているとは考えにくい。アルギニンメチル化による転写調節機構は不明であるが、リジンメチル化はクロマチン構築酵素のリクルートメントを調整している。クロモドメイン(HP1、PRC1)、PHD フィンガー(BPTF、ING2)、Tudor ドメイン(53BP1)、WD-40 ドメイン(WDR5)は、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ、デアセチラーゼ、メチラーゼおよび ATP 依存性クロマチン再構築酵素で見出されている、報告数が増えつつあるメチル化リジン結合モジュールのリストに含まれている。リジンメチル化は、これらの酵素に対する結合面を提供し、それによって、局所におけるクロマチンの活性化または不活性化を維持するためにクロマチン凝集やヌクレオソームの変動性を制御する。加えて、リジンメチル化は、非メチル化ヒストンと会合しうる蛋白の結合をブロックし、もしくは、近くのアミノ酸残基に起こりうる別の調節性修飾触媒反応を直接阻害することができる。DNA 修復蛋白 53BP1 分子内にメチル化リジン結合モジュールが存在することは、他の細胞変化におけるリジンメチル化の役割を示唆している。

ヒストンのメチル化は、発生過程におけるゲノムの適正なプログラミングをする上で、欠くことはできない。また、メチル化機構の誤った制御は、癌などの疾患状態を導きうる。最近まで、メチル化は、多様な細胞に継承され遺伝子の活性化/不活性化状態を維持するための、不可逆的かつ安定したエピジェネティクスの印と信じられてきた。メチル化が安定的な印であるという見解を拡大する事実はないものの、最近の LSD1/AOF2、JMJD1、JMJD2、JHDM1 などのヒストンデメチラーゼの同定によって、メチル化が可逆的で、しかも、個々の細胞系譜の分化過程で遺伝子がどのように再プログラミングされうるかという、理にかなった見解が示された。

参考文献:

翻訳監修: 千葉大学大学院 医学研究院 分子生体制御学 粕谷善俊先生

created May 2006

revised November 2010

ヒストンのメチル化 (Histone Methylation)

Reference