タンパク質のアセチル化 (Protein Acetylation)

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経路の説明:

タンパク質のアセチル化は、クロマチンの構造制御や転写活性制御に重要な働きをしている。実際、転写活性化に働く補因子の多くがアセチラーゼ活性を有しており、一方転写抑制に働く補因子は脱アセチル化に関与する。たとえばCBP/p300 (CREB binding protein) やPCAF (p300/CBP-associated factor) はアセチル化酵素複合体を形成し、Sin3、NuRD (nucleosome remodeling and histone deacetylation)、 NcoR (nuclear receptor corepressor)、SMRT (silencing mediator of retinoic acid and thyroid hormone receptor) は脱アセチル化酵素複合体を形成する。これら複合体は、様々なシグナル経路に応答して、DNA に結合する転写因子 (TF) となって働く。ヒストンアセチル基転移酵素 (HAT、あるいはリジン残基アセチル化酵素なのでKAT とも呼ばれる) はヒストンタンパク質を高アセチル化し、転写の活性化に関与する。一方ヒストン脱アセチル化酵素 (HDAC、あるいはKDAC) はヒストンタンパク質を脱アセチル化し、転写の抑制に関与する。ヒストンのアセチル化が転写を促進する理由は、ヒストンアセチル化がクロマチンの高次構造を改造するため、ヒストン-DNA 間の相互作用が弱まり、転写活性化複合体が結合しやすくなるためである。転写活性化複合体には、ヒストンのアセチル化リジンに結合できるブロモドメインと呼ばれるドメインをもつタンパク質が存在する。ヒストンの脱アセチル化は、これとは正反対の機構で転写を抑制する。すなわち、クロマチンは密な高次構造を形成するため、ブロモドメインをもつ転写活性化複合体は結合できなくなる。このようにヒストンの低アセチル化状態とは、転写抑制的なヘテロクロマチン構造をとっていることを示す。最近では、p53 やE2F など数多くの非ヒストンタンパク質もまた、部位特異的にアセチル化され、様々な制御に関わることが知られてきている。たとえば、これらのタンパク質の安定性や分解をはじめ、活性や局在、特異的相互作用などが制御され、転写、増殖、アポトーシス、分化など、細胞の様々な過程をコントロールしている。今では、ヒストンおよび非ヒストンタンパク質のアセチル化が、メチル化やリン酸化など他の修飾とクロストークし、最終的なシグナル発現に重要な働きをしていることが明らかとなっている。いくつかの修飾がある決まった順序で組み合わさることが、ある機能発現には必要であり、一方では、互いに阻害し合うこともある。このように組み合わせを変えることで、細胞内情報伝達のネットワークの多様性を生み出している。このことは、シグナル応答を様々に調節するのに役立っている。個体レベルでみても、アセチル化は免疫や日周期、記憶の形成に重要な働きをしている。今やタンパク質のアセチル化は、多くの疾病症状に対処する薬剤開発の有望な標的ともなっている。いろいろな活性化剤や阻害剤が試されているが、その多くはまだ特異性が低く、非特異なものが多い。それでも最近、いろいろなKAT やKDAC について、その機能や構造の詳細が明らかにされている。近い将来、より良質な特異性の高い調節因子が開発されると期待される。

図の用語:

ACTR, histone acetyltransferase and nuclear receptor coactivator
GCN5, histone acetyltransferase that functions as coactivator in transcriptional regulation
Tip60, HIV-1 Tat interactive protein, 60kDa, KAT5
ATM, ataxia telangiectasia mutated, phosphatidylinositol 3-kinase
BRCA1, breast cancer 1 gene
NBS1, Nijmegen breakage syndrome 1 (nibrin), DNA double-strand break repair and DNA damage-induced checkpoint activation
Sirtuin, silent mating type information regulation, NAD-dependent deacetylase

参考文献:

翻訳監修: 日本大学 医学部 病態病理学系病理学分野 江角眞理子先生

created November 2002

revised November 2010

タンパク質のアセチル化 (Protein Acetylation)

Reference